経営者

語るだけでは社員は動かない 理念を見える化する経営とは

浸透が難しい会社の「理念」

企業の「理念」――会社のスローガンとして、社長室やホームページに掲げている会社もあるかもしれません。多くの経営者が立派な理念を掲げ、社員にその重要性を語る機会を設けていることでしょう。

しかしその理念が社員一人ひとりの行動にまで結びついている会社は、そう多くありません。なぜなら、理念は往々にして純度の高い抽象的な言葉で表現され、社員にとっては“きれいな言葉”として耳に残っても、日々の行動や判断の基準にはなりにくいからです。言葉としての「理念」だけでは、経営者の経営についての理想や展望が本当の意味で社員へと浸透するのは難しいといえるでしょう。

「理念」を視覚化する「財務」

「理念」を現実のものとして裏付け、目に見える形で落とし込んでくれるのが、会社の数字、すなわち「財務」です。

社長が資産を整え、社員がその資産を活かして売上をつくる。これが会社という仕組みの根幹です。
店を持ち、設備を持ち、商品やサービスを用意し、そして社員が笑顔でお客様を迎え、工夫を重ねて売上を上げていく。そうして初めて会社は「利益」という結果を得ます。社員にとっては、会社の利益や成長を具体的な数字で確認することで初めて、自身が働いている企業がひとつの大きな船として、あるひとつの意思=理念を持って海を進んでいるという実感を得ることができるのです。

しかし、例えば「理念」と「財務」が一致していなければどうでしょう。経営者が常日頃から口にしている「理念」と会社が優先する資金の使い方が相反すれば、社員はすぐにその“ずれ”を感じ取ります。社員にとって理念とは、社長の発言ではなくお金の使い方そのものです。どの分野に資金を投じ、どこにリスクを取るのか。その選択が理念と一致していれば、社員は「この会社の方向性は本物だ」と感じ、迷わず力を発揮します。逆に、理念と財務がかみ合っていない会社では、現場のモチベーションが徐々に失われていくことは、想像に難くないでしょう。

財務は経営者の理念を如実に反映し、言葉以上に社員へと伝わります。資金の使い方そのものが理念の実践であり、そこにこそ社員は“会社の本音”を感じ取るのです。

「理念」と「財務」は経営の両輪

理念と財務を結びつけるには、もちろん社長自身が財務を理解している必要があります。数字を人任せにしてしまうと、財務の内情も現実の資金力も理解できず、結局は理念から外れたお金の使い方に終始してしまうでしょう。
理念を浸透させるということは、言葉で説得することではありません。社長自らが数字で理念を体現し、社員にその現実を、財務の読み方も含めた会社全体のいわば共通のマインドとして共有することです。理念と財務、この二つの両輪を社員と共有し、ともに回し続けることができる会社こそ、持続的に成長できる会社だと言えるでしょう。